経営法務ニュースVol.17(2022年11月号)

【はじめに】

鴻和法律事務所 弁護士・中小企業診断士 壹岐晋大のメールニュースです。

今回の記事
  • 経営法務TOPICS契約で守るサイバー攻撃による情報漏洩
  • TOPICS〈雑談〉弁護士の肩書について(弁護士会会長は手強い??)

経営法務TOPICS契約で守るサイバー攻撃による情報漏洩

先日、日経新聞の記事(10月15日「契約書も『サイバー防衛』免責や賠償上限定め紛争予防」)で、自社や取引先がサイバー攻撃を受けた際の防衛のために、契約書に、サイバー攻撃による情報漏えいに関する条項を盛り込む必要性が指摘されていました。

ハッカーイメージ

近年、中小企業にもサイバー攻撃が増えています。

企業間の通常の取引においては、サイバー攻撃についての対応は契約書に記載されていないケースが多いです。

自社や取引先にサイバー攻撃が起きて、取引が履行されなかったり、損害が発生してしまったりした場合に、その契約をどうするのか、損害をどう補填するのかなど事前の予防も重要です。

日経の記事でも紹介されていましたが、以下のような対策が考えられます。

条項案も含めて記載しています。

対策① 不可抗力条項

不可抗力条項とは、天災や戦争といった当事者が予見できない事情が発生した場合に、債務不履行責任を負わない旨の規定です。

最近の状況からは「戦争」も予見できる気もしますが、不可抗力で生じた納品の遅延などは責任を負わないという規定で、契約当事者いずれの責任ともいえないと思われるようなものが列挙されます。

例えば、

洪水、台風、地震、津波などの災害、伝染病(コロナ後に追加されることが増えました。)、戦争、大規模騒乱

等です。

ここに「サイバー攻撃」を追記することで、サイバー攻撃を受けたことによって生じた債務不履行については責任追求を回避することができます。

条項例

第●条(不可抗力)
地震、台風、津波その他の天変地異、戦争、暴動、内乱、テロ行為、サイバー攻撃、重大な疾病、法令・規則の制定・改廃、公権力による命令・処分その他の政府による行為、争議行為、輸送機関・通信回線等の事故、その他不可抗力による本契約の全部または一部(金銭債務を除く)の履行遅滞又は履行不能については、いずれの当事者もその責任を負わない。

ただし、上記の条項例のように、不可抗力条項は通常契約当事者双方に適用されるため、相手にサイバー攻撃がされた場合に、こちらから相手に対し責任追求ができないリスクはあります。

なお、サイバー攻撃も対応が全く不可能とまではいえないことなどからすれば、厳密には「不可抗力」といえるのかどうかという問題もあるため、一定程度のセキュリティ対策をしていることを前提に記載を求めることが望ましいと思います。

対策② サイバー保険の加入義務

近年、サイバー攻撃における情報漏洩対策として、サイバー保険に加入する企業も増えてきました。

ササイバー攻撃を受けた結果、情報漏洩してしまった場合において、損害賠償責任を負うのみならず、漏洩の範囲や内容(何がどこまで漏洩してしまったのか)など調査するための費用がかなり高額になるケースがあります。

これらのリスクのためにサイバー保険に加入するのです。

取引先にサイバー攻撃があった場合に、高額の対応費用がかかることを理由に、最低限の対応しかなされない場合や、賠償も十分になされない可能性などもあるため、相手にサイバー保険の加入義務を求めることなどが考えられます。 (メーカーとの取引におけるPL保険、建築工事における請負業者賠償責任保険など、契約において相手に保険加入を求める事案は珍しくありません。)

条項例

第●条(サイバー保険)
●は、サイバー攻撃、情報漏洩等による損害に対する担保として、その財産又は賠償責任の全額を保全するに足りる額のサイバー保険及び賠償責任保険に加入し、●に対し、その証書の写しを提出するものとする。

その他にも、サイバー攻撃があった場合に報告義務を求める条項や、サイバー攻撃による情報漏洩を予防するための措置義務を求める条項など、さまざまなパターンが考えられます。

契約条項に追加することなどを検討される場合はご相談ください。

TOPICS〈雑談〉弁護士の肩書について(弁護士会会長は手強い??)

先日、裁判の相手方代理人が弁護士会会長経験者になった案件がありました。その際依頼者より、「相手の弁護士は手強いのでは・・・??」と心配されました。

弁護士以外の方と弁護士とでは、肩書に感じるイメージはかなり違うかもしれません。

相手のB弁護士は、福岡県弁護士会の会長をされていたんですね。HPに記載がありました。

手強い弁護士をつけてきましたね・・

A社長
壹岐

確かに相手のB先生は数年前の●●県弁護士会の会長をされていましたね。

あまり気にする必要ないですよ。

でも、会長をされるということはかなり経験があるでしょうし、会長に強く言われたら壹岐先生も応じざるを得ないのでは・・?

A社長
壹岐

確かに会長をされる先生は30年くらいされているベテランが多いですね。

ただ、弁護士会会長と会員である私との間に上下関係などは一切ないですね。

社長も加入している業界団体のC会長になにか言われてもどうも思わないでしょう?

あそこも任期は1年ですし弁護士会と似ていますね。

私はC会長に言われたらなんでもやります。

A社長
壹岐

それは例えを間違えました。

では、以前訴状に代理人弁護士が10人以上書いてあったことがありました・・これは弁護団を組んでかなり力を入れているということでしょうか・・・

A社長
壹岐

最近は少なくなりましたが、事務所に所属する弁護士全員の記名押印がある訴状もありますね。

案件によりますが、実際は担当弁護士1、2名だけが関わっているケースが多いです。

他にも、税理士もされている弁護士もいますよね・・これは士業を2つも掛け持ちしているので、すごいのでは?

A社長
壹岐

なぜか知りませんが、弁護士の資格があれば税理士に登録することができます。

税理士登録をして、税理士実務をしていない方も多いと思いますね・・

そうなんですね・・

A社長
壹岐

当然ですが、弁護士会長経験者でもかなり手強い先生や、税理士登録されている先生でもバリバリ税務訴訟などに携わっている先生などもいらっしゃいますが、資格や経歴などを気にしている同業者は少ない気はします。

そうなんですね。

ちなみに先生も中小企業診断士っていうのを取得されていますね。

ではこれも大したこと無いのですか?・

A社長
壹岐