経営法務ニュースVol.32(2024年2月号)
はじめに
先日、仕事で小京都に行きました。
なんと全国には小京都と呼ばれる市町が53もあるそうです。(参考:全国京都会議)
ここは、どの小京都かわかりますでしょうか?
- 今回の記事
-
- 経営法務TOPICS弁護士相談のベストタイミングとは-弁護士が無難な回答しかしない理由?-
経営者の方が、「弁護士に相談だ!」と思うタイミングは、弁護士からすれば基本的に遅いです。
顧問弁護士がいる場合には、相談のハードルが下がりますが、それでも遅いことも多いです。
例えば、「問題社員の解雇」というテーマの問題では、どのタイミングで弁護士に相談すべきなのでしょうか。
- ①採用を検討している時 「採用時に気をつけることはありますか・・?」
- ②問題が発生した時 「どのように対応すればいいですか・・?」
- ③解雇を検討している時 「解雇しようと思いますが大丈夫ですか・・?」
- ④弁護士から内容証明が届いた時 「どう対応すればいいですか・・?」
- ⑤訴訟提起された時 「訴訟提起されてしまったのですが・・?」
どのタイミングで相談すべきなのでしょうか。
結論から言えば、早ければ早いほうが良いです。
これまでの会社側の対応に一切問題がなく、解雇も有効である可能性が高い場合には、訴訟になった時点でご相談いただいたとしても、問題はほとんどないと思います。
しかし、やはり完璧な対応は難しく、
- ③解雇検討時に、「解雇」を選択せずに、退職届を提出させていれば・・・
- ②問題発生時に、きちんと注意指導の記録を残していれば・・・
- ①採用時に少し怪しかったから、試用期間を設定していれば・・・
などなど、アドバイスできていれば、会社にとって結論は変わったなと思うことは多々あります。
これが、まず早めに相談した方が良いという理由です。
しかし、こう思われた経営者の方もいるのではないでしょうか。
- 「そんな事はわかっている」
- 「早めに相談したら、弁護士から『リスクが高い、そんなことはするな』と言われるでしょ・・」
- 「弁護士から怒られるな・・と思いながら相談するタイミングを失うんだよね」
まず、最後の弁護士から怒られるというのは、私がそんなに怒るタイプではないので、私に対してはそう思う人は少ないと思います(いませんよね)。
終わったことはしょうがないですし、現在持っているカードで戦うしかありません。
弁護士から、「リスクが高い」と言われることについてですが、確かに、弁護士は、解雇の難しさを認識している以上、どうしても無難なアドバイスになりがちです。
この無難な回答になる主な理由としては、以下の2点があると思います。
- 弁護士の知識、経験不足
- 相談者と弁護士の関係性
弁護士の知識、経験不足
まず、弁護士も知識、経験が不足していると、どうしても無難な回答をしてしまいがちです。
どんなに経験を積んでも、裁判例を調べても、ギリギリのラインの判断は難しいですが、会社として戦ってほしいと考える以上は、弁護士も研鑽を深める必要があります。
相談者と弁護士の関係性
弁護士と相談者との関係性が深くない場合(初めて相談に来られた場合)には、どうしても無難な回答になりがちです。
やはり、ある程度相談者との関係があれば、「この社長には、こう言ったら分かってくれる」「こういう踏み込んだ説明をしても理解してくれる」など細かいニュアンスの部分のコミュニケーションが取れるものです。
ちなみに、基本的に労務問題、特に解雇の問題というのは、法的に有効かどうかという問題だけではありません。
「法的に有効だから解雇する」「法的に無効だから退職勧奨に留める」という単純なものではなく、経営判断として、法的に無効となる可能性が高いものの解雇をせざるをえないケースという事例は往々にしてあります。
当然、法令遵守は大事なので、明らかに無効な理由のない解雇はすべきではないのは当然ですが。
解雇をするかどうかを判断する基準としては、以下のようなものがあると考えます。
- ①解雇理由となる事実があるか(証明できるか)
- ②就業規則上の解雇理由に該当するか
- ③解雇が争われる可能性があるか(従業員の性格等)
- ④他の従業員への影響(解雇をしないことで人が離れる可能性)
- ⑤解雇が無効になった場合の支払額(給与、転職の有無)
- ⑥代表者の思い
- ⑦賠償責任保険の加入の有無(保険を使って支払えるか)
- ⑧その他の事情
弁護士が法的に有効かどうかという点を説明するのは、主に①〜③です。
ただ、会社が解雇をするかどうかを判断する上では、法的な部分以外の判断があります。
上記①〜⑧も含めて、解雇するかどうかを判断していく必要があると思いますし、弁護士としてはそのような意思決定のサポートをしていくべきだと思います。