
内容のポイント
- 一定の個人情報漏えいが起きたら(「おそれ」の段階でも)、国への報告と本人への通知は法律上の義務です。件数が少なくても対象になることがあります。
- 国への報告は「速報(概ね3〜5日以内)」と「確報(原則30日以内)」の2段階。
- 法律上の義務以外にも、証拠保全・取引先対応・保険の確認など検討事項は多数。公開されている手引きで「事前準備」をしておきましょう。
- 企業としては不必要な個人情報を取得しないようにしましょう。
「メールの誤送信」も他人事ではありません
最近、不正アクセスによる情報漏洩のニュースが後を絶ちません。
PHPのセキュリティ上の脆弱性の問題の際も、対応を余儀なくされた事業者の方も多いのではないでしょうか。
ランサムウェア被害、従業員による顧客名簿の持ち出し、メールの宛先間違い。個人情報の漏えいは、規模の大小を問わずどの会社でも起こり得ます。
むしろ、専任の担当者がいない中小企業ほど「何をすればいいのかわからない」まま時間が過ぎてしまいがちです。
今回は、漏えいが起きたときに法律上求められることに絞って、お伝えします。
【法律上の義務①】個人情報保護委員会への報告
次のいずれかに当たる漏えい等が発生した場合(発生した「おそれ」がある場合を含みます)は、個人情報保護委員会への報告が義務付けられています。
- ①要配慮個人情報が含まれる
- 例:従業員の健康診断結果、病歴
- ②財産的被害のおそれがある
- 例:クレジットカード番号、ネットバンキングのID・パスワード
- ③不正の目的によるおそれがある
- 例:不正アクセス、ランサムウェア、従業員による持ち出し
- ④1,000人を超える漏えい
注意すべきなのは、①〜③は、たとえ1人分でも対象になる点です。
「数件だから大丈夫」とはなりません。
報告は2段階です
- 速報
- 事態を知ってから速やかに(目安は概ね3〜5日以内)
- 確報
- 30日以内(③の「不正の目的」による場合は60日以内)
速報の時点では、全容がわからなくても判明している範囲で報告すれば足ります。
「調べ終わってから」では間に合いません。
【法律上の義務②】本人への通知
上記の報告対象となる場合には、本人への通知も必要です。
漏えいした情報の項目、原因、二次被害のおそれなどを、状況に応じて速やかに伝えます。
連絡先がわからない等で通知が困難な場合は、ホームページでの公表と問い合わせ窓口の設置などの代替措置をとります。
タイムズカーに登録されている方など、漏洩先からメールが来た方もいるのではないでしょうか?これが本人への通知です。(私は既に相当前に退会していましたが、タイムズカーから通知が来ました。)
これらの義務に違反すると、委員会から勧告・命令を受け、命令に従わない場合は罰則の対象にもなります。
2026年の法改正にも注目
2026年7月17日に改正個人情報保護法が公布され、施行は公布から2年以内に政令で定める日とされています(罰則規定は2027年1月17日施行)。
改正項目には、漏えい時の本人通知義務の緩和(※漏洩した情報単体だけでは意味を持たない情報の漏洩のケースなどにおいて本人通知義務を課さないとする等)が含まれています。
そのほか検討すべきポイント
法律上の報告・通知と並行して、次の点も検討が必要です。
- 被害拡大の防止と証拠保全
- 感染端末はネットワークから切り離す一方、電源を切ったりログを消したりしない(原因調査ができなくなります)
- 取引先への連絡
- 業務委託契約や秘密保持契約で、事故時の通知義務が定められていることが多いです
- 警察への相談
- 不正アクセスや持ち出しは犯罪に当たる可能性があります
- 公表・お詫び・問い合わせ対応
- 対応窓口と想定問答の準備
- 保険の確認
- サイバー保険等で調査費用や賠償がカバーされるか
- 再発防止策と、持ち出しであれば懲戒処分の検討
目を通しておきたい公的資料
- 個人情報保護委員会
「漏えい等の対応とお役立ち資料」
- 報告の要否の判断や報告フォームがまとまっています。
- IPA
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」
- 経営者が実行すべき「重要7項目の取組」や、すぐ使える規程のひな形が付録になっています。「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」も手軽です。
さいごに
漏えい対応は「起きてから考える」では間に合いません。
まずは、誰に連絡し、誰が判断するかだけでも社内で決めておくことをお勧めします。
万一の際は、早い段階で弁護士にご相談ください。
なお、個人的には企業が個人情報を不必要に取得しすぎていると思います。
どのような目的に使うのかなどによって、個人情報をどこまで取得するのか(特に要配慮情報や財産的被害が発生しうる情報を取得する必要があるのかどうか)、いつまで扱うのかについて、個人情報取扱事業者として考える時期に来ているように思います。