経営法務ニュースVol.58|2026.04
飛び石被害
先日、車で都市高速を走っていると、いきなりフロントガラスが「ガチッ!!」と音がしました。
職業柄、恨みを買いやすいので、狙撃されたかと思いました。
ちなみに、これまでディーラーの自動車保険に入っていたのですが、その保険は解約させていただいて、今年から別のところで保険に入りました。
ディーラーの自動車保険では、飛び石被害は無償で対応してくれる内容だったのに、替えた瞬間に本当にツイてません・・
ディーラーの担当者による狙撃の線も出てきました。
今回の記事
- 経営法務TOPICS
- 退職従業員の営業を辞めさせたい②-不正競争防止法に基づく対策-
- 退職従業員が会社の情報を利用して営業している場合の対策には、誓約書の他に不正競争防止法を主張するケースがある
- 不正競争防止法の主張をするには、営業秘密として情報を管理していることが重要
- 秘密管理性を備えるための具体的な要件とは・・
退職した従業員が、在職中に知り得た顧客情報を持ち出し、競合他社や自ら立ち上げた会社で営業活動を続けている―このような事態に頭を悩ませる経営者は少なくありません。
「うちの顧客をそのまま引き継いでいる」と感じても、どのような法的手段が取れるのか分からず、泣き寝入りしてしまうケースも多く見られます。
2026年2月号のニュースレターで、退職従業員の営業を辞めさせたいというテーマで競業避止義務違反について説明しました。
今回は、競業避止義務とは違う手段である不正競争防止法に基づく対策を説明します。
競業避止義務との違い―不正競争防止法を使う意味
退職従業員の競業行為を制限する手段として、まず思い浮かぶのは誓約書や就業規則に定めた競業避止義務でしょう。
しかしこの方法には限界があります。
競業避止義務はあくまで会社と従業員の間の契約であるため、義務を負うのは退職従業員本人のみです。
退職従業員を雇い入れた競合他社や、顧客情報を受け取った第三者には原則として請求できません。
また、競業避止義務は期間・地域・業務範囲が限定的でないと無効と判断されるリスクもあり、実際の訴訟では効力を否定されるケースも多く見られます。
一方、不正競争防止法に基づく請求には次のような強力なメリットがあります。
- 差止請求・損害賠償請求が可能
- 競合他社など第三者への請求も可能(情報を受け取った側が悪意または重過失の場合)
- 刑事告訴が可能
つまり、退職従業員だけでなく、その転職先や取引先まで巻き込んで法的対応ができる点が、競業避止義務との決定的な違いです。
不正競争防止法を主張するための要件
不正競争防止法の主張をするためには、まず不正競争防止法上の「営業秘密」として情報が保護される必要があります。
具体的には、以下の3要件をすべて満たす必要があります。
- 秘密管理性:秘密として管理されていること
- 有用性:事業活動に有用な情報であること
- 非公知性:公然と知られていないこと
顧客情報の場合、氏名・連絡先・取引履歴・ニーズ等をまとめたリストは有用性・非公知性を満たすことが多いです。
実務上、最も争われるのが秘密管理性です。
秘密管理性を備えるための実務対策
「秘密として管理していた」と裁判所に認めてもらうためには、従業員が「これは秘密情報だ」と認識できる客観的な措置が必要です。
具体的には以下の対策が有効です。
- 顧客データへのアクセス権限の設定(閲覧・編集できる社員を限定する)
- ファイルや書類への「社外秘」「confidential」の明記
- 情報持ち出し禁止・退職時の返却に関する誓約書の取得
- システムのログ管理(誰がいつデータにアクセスしたかの記録)
- 定期的な情報管理研修の実施と記録の保存
実際に問題が起きて退職従業員に対する請求を考えていく中で、不正競争防止法上の主張をする際に、この要件を満たさず、もっと早く営業秘密としての準備をしていれば・・と思うこともあります。
これらの対策が不十分な場合、裁判所に秘密管理性を否定され、せっかくの主張が認められないリスクがあります。
「うちは中小企業だから…」と後回しにせず、今すぐ整備することが重要です。
何でもかんでも営業秘密として保護することはできませんが、特に持ち出しを禁止したいものに限定して管理を行っていくことが、実際に不正競争防止法上の主張をしないでも、漏洩のリスク管理等にもつながります。
まとめ
退職従業員による営業秘密の持ち出しは、放置すれば事業の根幹を揺るがしかねません。
著作権などの知的財産権で保護されない、顧客情報などの営業秘密も会社にとっては重要な資産です。
不正競争防止法は、このような知的財産権では保護できない情報や、競業避止義務では届かない第三者への請求や刑事告訴まで可能にする強力な手段です。
ただし、その威力を発揮するには日頃からの秘密管理体制の整備が前提となります。
「被害が起きてから」ではなく、「起きる前」に弁護士に相談し、社内の情報管理を見直すことをお勧めします。



