経営法務ニュースVol.35(2024年5月号)

一緒にゴルフを回りたくなくなる情報

4月中旬に、ゴルフトーナメント(とある車メーカーオーナーのアマチュアの大会)に参加してきました。

その日は朝から激しく雨が降っていました。

「中止かな〜」と呑気に思っていましたが、会場につくと当然のように開催の雰囲気で、大会では雷がならない限りは開催するものだということを初めて知りました。

あいにくの雨

ゴルフ場で急遽レインウェアを購入して、雨に降られながらなんとか回りました。

自分の中では、天候が悪い中でもぼちぼち良いスコアだったと満足しつつ、夕方発表された順位を見ると140人程度の参加者中121位でした笑(ダブルペリア方式)

こんなひどい雨の中ですることはなかなか無いと思っていたのですが、大会の1週間後に行った事務所旅行でのゴルフでは、大会の時以上に降られました。

今回の記事
  • 経営法務TOPICS(弁護士による調査)どこまで調べられる?どこまで調べられてしまう?
  • お知らせ弁護士費用についてホームページに掲載しました。
  • (弁護士による調査)どこまで調べられる?どこまで調べられてしまう?

    先日、「ある男」という映画を観ました。

    主人公の弁護士が、依頼者の死別した夫の身元の調査依頼を受けます。

    その夫は名前もわからない全くの別人であり、主人公の弁護士がその男が一体何者なのかを明らかにしていく、、、というストーリーです。

    弁護士の描写もリアルで、考えさせられる内容で面白かったので、ご興味ある方はぜひ。(私はAmazonプライムビデオで観ました。)

    この映画もそうでしたが、映画やドラマでは弁護士が探偵のように活躍する描写がありますが、実際には聞き込みに行ったりするケースは少ないです。

    弁護士に依頼をして、基本的に弁護士でなければ調べられない情報というのはどのような物があるでしょうか。

    参考までに、ご紹介します。

    事例

    Aさんは妻との関係が悪化し、別居していましたが、偶然、妻と “ある男”が、知らない車でホテルに入っていく場面を写真に収めることに成功しました。

    妻及びある男に慰謝料請求を考えています。

    Aさんは妻の現在の住所もわからず、ある男についても写真しか無いため、どこの誰だかわかりません。

    弁護士が職権として利用できる調査の代表的なものは以下の2つがあります。

    ①職務上請求
    ②弁護士会照会

    ①職務上請求

    弁護士は、弁護士業務に関連して必要となる、住民票や戸籍等を取得することができます。

    相手に内容証明郵便を送付したいけれど、相手は既に引っ越しをしているようで、現住所がわからない、、といった場合には、有用です。

    また相続事件などに関連して、戸籍などの取得が必要になる事件がありますが、それも職務上請求で取得が可能です。

    ただ、今年の3月から本籍地以外の市区町村の窓口で、出生から死亡までの戸籍等必要な書類がまとめて取得できるようになりました。

    これは、現在は職務上請求では利用できず、その関係では、依頼者本人が取得したほうが早期かつ簡単に取得できるといったケースもあります。(参考:法務省 戸籍法の一部を改正する法律について

    Aさんは弁護士に依頼し、まず職務上請求で妻の住民票を取得し、現在の住所を確認しました。

    ただ、妻は住民票上では一人暮らしで、ある男の情報はまだわかりません。

    ②弁護士会照会

    弁護士が、所属する弁護士会を通じて、各関係先に照会文書を送付し、回答を取得するという方法があります。

    これを弁護士会照会といい、一般的に23条照会といいます(弁護士法23条の2が根拠規定のため)。

    この手続きは、どのような機関にどのような照会をするのかは自由であり、回答があるケースや無いケースもあるので、詳しくはご相談いただければと思いますが、典型的なケースとしては、債権回収のときの相手の預金口座の調査などがあります。

    債権回収事件などでは、裁判で判決等を取得しても支払いがなされない場合等があります。

    そのような場合に、相手名義の預金口座の取引履歴について、弁護士会照会を通じて回答を得ることができます。

    当然、預金の残高があれば、預金口座を差し押さえますし、取引履歴などで給与が判明すれば給与を差し押さえたり、生命保険料の支払いがある場合には生命保険の解約返戻金を差し押さえたりすることで、回収が実現できるケースがあります。

    また、弁護士会照会で、電話番号から契約者情報を取得したりすることもできます。

    相手の電話番号しかわからないというケースもあるためです。

    大手キャリアの中でソフトバンクは一切回答を拒否していた時期がありましたが、現在はNTTドコモ、auだけでなくソフトバンクも回答します。

    Aさんは、弁護士を通じて車のナンバープレートの番号から、弁護士会照会の手続きで、自動車検査登録事務所から車検証に記載の情報の回答を得ました。

    すると、所有者はBさんであることや所有者住所が判明しました。

    そこで、Aさんはその住所の近くで張っていると、その住所から浮気現場で見たある男が出てきたところを発見しました。

    ①②の他には、弁護士ではなくてもできる手続きではありますが、裁判の手続きの中で、裁判所を通じて照会文書を送付する手続き(調査嘱託、文書送付嘱託等)があります。

    実際に現地に行って関係者に話を聞きに行くケースなどもありますが、どのように調査をするかは、弁護士によって様々です。

    ドラマや映画のように全てうまく調査できるわけでは無いですし、効率的とはいえないかもしれませんが、そのような必要がある場面も多くあります。

    このように、法律上認められている調査に加えて、様々な調査方法を検討しながら日々の業務を行っております。

    最終的にBさんがある男と判明したので、Aさんは、妻とBさんに損害賠償請求訴訟を提起をしました。

    勝訴判決を得ましたが、Bさんは一向に支払わないので、福岡銀行、西日本シティ銀行などの主要な銀行に弁護士会照会をかけると、株式会社Cに勤務していることが判明し、差し押さえをしたら、その後一括で支払いがなされ、無事解決に至りました。

    • ※事例はフィクションです。不貞慰謝料請求事件においてこのような調査手法を取るケースが多いわけではありません。弁護士による調査手法の解説のための参考としてご理解ください。
    • ※弁護士は、職務上請求、弁護士会照会の手続きの利用のためだけに依頼を受けることはできません。「相手の住民票だけ取ってほしい」という相談は対応できません。事件の依頼に関連する範囲でしか手続きが利用できませんので、ご注意ください。

    弁護士費用についてホームページに掲載しました。

    基本的に、個別の案件についての弁護士費用については、事件の内容や難易度などに応じて、個別にご提案させていただいておりますが、これまでご提案させていただいていた弁護士費用について、目安となる基準をこちらに掲載しております。

    今後、また具体的な基準についてもご案内できるよう修正等を検討しています。