経営法務ニュースVol.29(2023年11月号)

はじめに

数年前から、2、3か月に一度の頻度で耳の下が腫れておたふく風邪みたいになるものの1時間ほどで治まる、という謎の病に悩まされていました。

何度か口腔外科、耳鼻科などに行くものの、「異常はないですね〜まあ様子見ですね〜」と言われ続け、頭の片隅にずっと引っかかっていました。

つい最近、健康診断に行った際に、診察時に相談してみると、先生から「あ〜それ、病院では様子見って言われるでしょ? 唾石症ってやつかもですね〜」 と言われ、まさにそれが自分の症状とほぼ同じで、的確?なアドバイスをもらいました。(今後ちゃんと病院に行こうと思います。)

私も、職業は違いますが、このように解決の糸口を見つけることができるようなアドバイスができるようにならなければ・・と感じました。

ちなみに唾石症の予防には「梅干しを毎日食べるとよい」というのを目にしましたが、梅干しは苦手食材なので、ネット情報は鵜呑みにしないようにします。

今回の記事
  • 経営法務TOPICSカスハラ対応で最低限注意するポイント

カスハラ対応で最低限注意するポイント

2020年6月に厚労省が策定したパワハラ防止指針が施行されました。

その中に、「7 事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」として、カスハラに関する内容が記載されています。

最近は、パワハラ、セクハラなどの問題は法改正などの成果か、徐々に減りつつあるようですが、そのかわりにカスハラの問題が増えているようです。

社内でパワハラができなくなった社員が社外でカスハラをしているのでは・・?という見立てもあります。

そもそもカスハラとは何でしょうか。

クレームとは違うのでしょうか。

明確な定義は無いのですが、以下のような図で整理することができます。

カスハラとクレームの関係

クレームはいわゆる「要求」ですが、

  • ①そのうち正当な要求を「正当クレーム」(例:提供された料理で食中毒になったから治療費を払ってほしい)
  • ②不当な要求を「不当クレーム」(例:提供された料理が美味しくないから、料理代を返金しろ)
  • ③要求を伴わない単なる「嫌がらせ」(例:「店員の態度が悪い」というコメントと一緒に店員の写真をSNSに投稿)

と分類した上で、②③をいわゆる「カスハラ」と考えるという理解です。

カスハラ対策は今やBtoCのみならず、BtoBの企業でも重要な課題とされていますが、まだ対応が十分ではなく、紛争が激化して弁護士に相談しにこられるケースも多くあります。

対策のポイントは、

  • ①と②の見極め(クレームが正当か不当か)
  • 謝罪の仕方

です。

①と②の見極め

③嫌がらせ の判断はわかりやすいですが、クレームが正当か不当かという点は判断が難しいです。

その正当なクレームと不当なクレームについて線引するには、まずは事実関係の聴取が重要です

そして、見落としがちなポイントですが、さらに重要なのは、相手の要求の確認です

クレームがあったときに、具体的な事実を聞いたり要求を聞いたりすることで逆上させるのでは、、と思われるかもしれませんが、少々怒られても我慢強く聞くことが大事です。

特に、「誠意を見せろ」といった要求については、具体的な請求内容、その根拠資料があるかを聞く必要があります。

被害者(という意識を持っている方)は、損害については主張すれば払われるべきと思っている方もいます。

加害者なんだから賠償して然るべきという発想です。

但し、法的には被害者が損害(加害者の行為によって損害を被ったこと、実際に損害が発生したこと)を立証しなければ請求はできません。

当然、全て裁判をするわけではないので、どこまで認めるかはケースバイケースですがその意味で相手からしっかりと内容を確認することが重要です。

謝罪の仕方

事実関係を確認し、それが正当クレームである場合には、こちらの非を認め謝罪をしなければなりません。

しかし、それがカスハラである場合や正当クレームか不当クレームか判断できない場合において謝罪をするには注意が必要です。

「申し訳ありません。」という謝罪をしたからといって、全て責任を負うということはありません。

但し、「〇〇をしたことについて申し訳ありません。」、「〇〇を怠っており申し訳ありません。」 などと、相手の主張する事実や、こちらの義務を認めてしまったり、 「〇〇について賠償させていただきます。」 などと、法的な責任を認めてしまっていると、後に決裂した際にも影響を与えるケースもあります。

謝罪をする際は、 「不快な気持ちにさせてしまい、申し訳ありません。」 などといった程度での謝罪にとどめておくべきだと思います。

なお、カスハラ対応については、その他にも

  • 録音はどのようにすべきか
  • 「社長を出せ」と言われたときの対応
  • 損害賠償責任の考え方

など対応について色々とお伝えすべき点はありますが、今回はここまでにしておきます。

お困りのことなどがありましたら、遠慮なくご相談ください。