経営法務ニュースVol.27(2023年09月号)

鴻和法律事務所 弁護士・中小企業診断士 壹岐晋大のメールニュースです。

今回の記事
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直前対応:10月から開始する規制(インボイス・ステマ対応)

1.インボイス対応

10月からいよいよ始まるインボイス制度。

直前ではありますが、念のため免税事業者(適格請求書発行事業者登録をしない事業者)との取引に関する対応をまとめておきます。

①10月以前より取引のある免税事業者に対する対応

適格請求書発行事業者登録を促し、それが困難である場合には、消費税相当額を減額するよう交渉し、交渉がまとまらない場合には取引終了も検討することになります。

当然、取引先との条件を一方的に変更することはできず、強制的に減額を求めた場合には、独占禁止法上の問題が発生します。

厳密には経過措置を考慮した減額(50〜80%等)とすべきですが、消費税相当額を減額する場合には、同意書を取得するなどの対応が望ましいでしょう。

②10月以降新たに取引を開始する免税事業者に対する対応

取引対価に消費税相当額を含めない合意をした上で、取引を開始することになります(当然、消費税を含める合意をしても問題ありません)。

独占禁止法で問題とされるのは、従前の取引条件を変更することなので、10月以降の新たな取引先の条件について制約されるものではありません。

③契約条項の修正

契約書の支払条件には、「業務委託料(消費税及び地方消費税相当額を含む)」といった記載があることが多いですが、10月以降に②として対応する場合には、「但し、適格請求書発行事業者ではない場合若しくは同事業者であっても適格請求書を交付しない場合には、業務委託料に消費税及び地方消費税相当額を含まないものとする。」 といった条項を追加して記載をする対応も考えられます。

2.ステマ対応

ステマとは、ステルスマーケティングのことで、消費者に広告と気づかれないように行われる広告行為のことをいいます。

典型的なのは、インフルエンサーによる商品の紹介を事業者が依頼するものですが、これまで日本では規制がされていませんでしたが、10月から規制が始まります(直接罰則の規定があるわけではないですが、措置命令の対象となります)。

インフルエンサーなどを用いた広告などをしている事業者や、検討している事業者は要注意です。

広告に関する主な規制は、品表示法という業種に関係ない規制と、各業種ごとの業法による規制などがあります。

今回のステマ規制は業種に関係のない規制である景品表示法に関して創設されました。

景品表示法は、主に以下の3つの規制があります。

①優良誤認表示

品質、内容について実際よりも著しく優良であると誤認させる表示

②有利誤認表示

価格、取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認させる表示

③指定告示

①②には該当しないが、不当な表示として内閣総理大臣が指定する表示

今回のステマ規制は③の指定告示として定められました。(令和5年3月28日内閣府告示第19号)

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるものが不当表示とされました。

つまり、「事業者による表示(要件①)」であり、それを「一般消費者が判別困難(要件②)」なものがステマ規制の対象となります。

告示の文章だけでは抽象的なので、運用基準が公表されており、実際の運用としてはこれを確認する必要があります。

実務上の対応としては、要件①に該当するか(事業者による表示といえるか)については、会社が明確に広告を出稿するケースではなくても、従業員や第三者によるSNS利用が、ステマ規制の対象となってしまう可能性がありますので、特に従業員に対するSNS利用において、管理が必要になってくるでしょう。

要件②に該当するか(一般消費者が判別困難か)については、「広告」「PR」などと広告であることを明示することは重要です。(最近、SNSでの広告案件は、「#PR」などと明記されているケースが多いです。もっとも、大量のハッシュタグを用いて埋もれさせないように運用基準でも指摘されています。)