経営法務ニュースVol.15(2022年9月号)

【はじめに】

鴻和法律事務所 弁護士・中小企業診断士 壹岐晋大のメールニュースです。

今回の記事
  • 経営法務TOPICSメンタルヘルス不調従業員への基本的対応
  • TOPICS公正証書遺言の作成が電子化?

経営法務TOPICSメンタルヘルス不調従業員への基本的対応

  • 「うつと言われて休職しているが、もう3か月になる。いつまで休ませればよいのか・・」
  • 「長時間労働の結果うつになったと主張している従業員がいるが・・どのように対応すればよいのか・・」
  • 「休職した従業員が復職の希望を出している。ただ、メンタルヘルス不調は良くなっていないようだが・・」

等々メンタルヘルス不調従業員への対応で困っている相談はよくあります。

メンタルヘルスイメージ

今回は休職制度に関する基本的な考え方を解説します。

うつ病等メンタルヘルス不調によって1週間休んでいる従業員がいると想定して、会社の対応を確認していきます。

①メンタルヘルス不調の原因の確認

メンタルヘルス不調の原因の確認というのは、端的に言えば、「労災なのか否か」ということです。

業務に起因してメンタルヘルス不調になったとなれば、労災に該当し、業務に関係なくメンタルヘルス不調になったとなれば労災には該当しません。

労災に該当する場合には、基本的に休職を認めなければなりません。

そして治療が終了するまでは解雇をすることができません。

そのため、労災に該当するか否かという問題はまず対応の出発点ではあります。

ただ、メンタルヘルス不調の難しいところは、原因が一つというわけではないことから、判断が難しいことです。

「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」も改正パワハラ防止法施行等に伴い、見直しがなされています。

判断に悩む場合は、まず労災申請をして労基署の判断を受けて、対応を判断するという方針を取ることも多いです。

②休職制度の確認

では、労災ではなく私病としてメンタルヘルス不調となっている場合はどのように対応することになるでしょうか。

会社としてすべきなのは就業規則の確認です。

就業規則に「休職」に関する規定はあるでしょうか。従業員が長期で休みを取りたい場合、休職制度を利用する事が多いです。

休職という制度は、労働基準法等で認められた従業員の権利ではなく、あくまで会社が任意で定めている制度です。

そのため「休職命令」という会社に裁量の余地を残した命令の制度になっているものが多いです。

就業規則等で休職制度が定められていない会社は、メンタルヘルス不調によって欠勤している従業員がいる場合で欠勤が続き復職が難しいとなれば、単に普通解雇を検討することになります。

休職制度を就業規則で定めている場合は、その制度に則って対応することになります。

先に休職を認めて、後に就業規則に休職制度の定めが有ることに気づくというケースも珍しくはないので、休職に入る従業員に、

  • 会社として休職が認められる期間
  • 休職後復職するにあたって必要な手続き(復職を認める診断書の提出)
  • 定期的な体調等状況の確認を求めること

等を伝える必要があります。

そして、休職期間が満了に近づくタイミングで、従業員に復職の意向を確認し、復職ができない場合には、普通解雇もしくは自然退職等の判断になります。

復職は基本的に治癒しているか(従来の業務を健康時と同様に遂行できる程度に回復すること)否かという判断になります。

メンタルヘルス不調の従業員の対応は、慎重な対応が求められます。

対応にお困りの方はご相談ください。

TOPICS公正証書遺言の作成が電子化?

裁判も「e裁判」といって電子化が徐々に進んでいます。

先日、法務省が公正証書の作成の手続きを全面的にオンライン化する方針を固めました。

公正証書とは、公証人が作成する文書で、一般的に通常の契約書等の私文書より信用性が高く、判決等を取らずに強制執行の効力を持ち合わせることができるという文書です。

よく、遺言や賃貸借契約(事業用定借等)、金銭消費貸借契約等で用いられることがあります。

ただ、手続が若干面倒で、公証役場にて、公証人の立ち会いの下で署名、押印を行う必要があります。

契約書を作成して公証役場に行けばすぐ公正証書になるわけではなく、契約の文言等に問題がないか等の細かいチェックがされます。

今回の法務省の方針では、申込みや必要書類の提出、作成、内容確認、署名といった一連の手続きが電子化され、公証役場に行く必要がなくなるとのことです。

スケジュール

企業の事業承継等で遺言書の作成の支援をすることがあり、その際に公正証書遺言を作成することもありますが、電子化により手続が簡易となることに期待しています。