経営法務ニュースVol.33(2024年3月号)
はじめに
最近、顧問先の社長から「後継者に会ってほしい」という話をされる機会があります。
弁護士の引き継ぎ、事業承継の進め方に悩んでいる、などなどその目的は様々です。
頻繁に来るM&Aを勧めるDMにうんざりされている方も多いと思いますが、それでもまだ中小企業の事業承継は親族内承継が多いです。
やはり血は強いです。
経営者と後継者の意識のギャップは大きいです。
M&Aなどのように交渉ではなく、相互の歩み寄りのサポートの大切さを感じます。
- 今回の記事
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- 経営法務TOPICS問題社員かどうかを見極める?リファレンスチェック(前職調査)の仕方
とある人手不足に悩む中小企業の話・・・
- 採用面接で提出された履歴書を見ると、1〜2年ごとに転職を繰り返している
- 少々不安を抱えながらも、人手不足から採用することに
- 採用当初は真面目に働いていたが、徐々に無断欠勤や仕事上のミスが目立ち始める・・
- 他の従業員から、辞めさせてほしいという申し出・・
- やむなく、退職勧奨をすると「絶対に退職しない」とのこと
- 結局解雇するも、弁護士を入れて労働審判を申し立てられた!!
近い事例は経験がある経営者の方はいらっしゃるのではないでしょうか。
このトラブルの対処法としては、採用時の前職への調査が有効なことも多いです。
調査の方法や注意点をまとめます。
前職調査の方法
- リファレンスチェック
- 退職証明書
リファレンスチェック
リファレンスチェックとは、前職(退職していない場合は現職)の上司に対し、応募者の経歴や勤務状況を問い合わせすることです。
これに関連する法令は、
- 個人情報保護法:個人データを同意なく第三者に提供することの禁止
- 職業安定法(職業紹介事業者指針):本人以外の第三者から情報収集する場合には本人の同意が必要
があります。
簡単に言えば、情報を提供する前職の会社も、情報を聞き出す採用する側の会社も、その求職者の同意を取る必要があるとされています。
つまり、採用時に求職者から同意を取ったうえで(前職に示すために同意書等が必要です)、確認する必要があります。
確認する内容は、
- 在籍の期間
- 職務内容
- 実績
- 懲戒処分の有無
- 退職理由
- 勤務状況や勤務態度
などが考えられます。
なお、転職活動は、通常在職中に行われることも多く、在職している会社には伝えずに行うことが多いため、求職者から同意を取れないケースもあります。
その場合には、退職後に退職証明書の提出を求めるという方法もあります。
退職証明書
退職証明書とは、退職する従業員が会社に求めた際に、会社が提出しなければならない書面です(労働基準法22条)。※離職票とは別の書類です。
退職証明書に記載される内容は、
- 勤務期間
- 業務の種類、内容
- その会社における地位
- 賃金
- 退職の理由(解雇の場合は解雇理由)
退職証明書を確認して、面接で聞いていた話と違うことが判明するケースもあります。
また、そもそも退職証明書の提出を拒否するなど不自然な対応をされるケースもあり、有効な手法ではあります。